バーベルプルオーバーはフォームによって大胸筋に効いたり背筋に効いたりする、少し特殊なトレーニング種目ですが、それぞれに効かせるためのポイントは肘の角度と位置です。それらをわかりやすく解説するとともに、目的別に適切な負荷・重量・回数設定をご紹介します。
■バーベルプルオーバーが効果のある筋肉は?
●バーベルプルオーバーは大胸筋と広背筋に効果的
バーベルプルオーバーは、そのフォーム・肘の角度と位置により大胸筋または広背筋に効果的な種目です。また、筋肉だけでなく胸郭を拡張するトレーニングとしても広く行われています。
■バーベルプルオーバーのやり方と効果的なフォーム
●プルオーバー系種目における体幹表層筋の動作
まずは、こちらの3DCG動画をご覧ください。動画はダンベルプルオーバーのものですが、プルオーバー系種目の縦方向に腕を上下させる動作において、拮抗する体幹表層筋である大胸筋と広背筋がどのように動作するか、視覚的に知ることができます。
また、筋肉だけでなく、胸郭を構成する肋骨も大きく動くことがおわかりいただけると思います。
●大胸筋に効かせるベントアームスタイル
こちらが、大胸筋に負荷を集中させられるバーベル「ベントアーム」プルオーバーと呼ばれるバリエーションです。その最大の特徴は、肘を90度弱に曲げたまま動作を行うということです。
また、グリップは肩幅程度にし、肘をあまり開かずに構えることも大胸筋に負荷を集めるために重要です。
さらに、大胸筋の収縮と首の連動性を考慮して「顎を引く」ということも大切なポイントです。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①ベンチに仰向けになり、肩幅程度にシャフトをグリップして、肘を曲げて胸の上でバーベルを構える
②肘の角度を固定し、肩甲骨を寄せて、頭の後ろにバーベルを下ろしていく
③バーベルを下ろしたら、肩甲骨を広げながらバーベルを上げていく
④バーベルを元の位置まで上げたら、肘を閉じ、顎を引いて大胸筋を完全に収縮させる
●広背筋に効かせるストレートアームスタイル
一方、こちらが広背筋を狙ったバーベルプルオーバーの模範的な動画です。大胸筋ねらいのベントアームスタイルに対して「ストレートアーム」プルオーバーと呼ばれ、肘を伸ばして大きく開いて行うことが特徴です。
なお、背筋群と首の連動性を考慮し「顎を上げて」動作を行うことが重要です。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①ベンチに仰向けになり、肩幅より広くシャフトをグリップして、肘を伸ばして胸の上でバーベルを構える
②肘の角度を固定し、肩甲骨を広げながら、頭の後ろにバーベルを下ろしていく
③バーベルを下ろしたら、肩甲骨を寄せながらバーベルを上げていく
④バーベルを元の位置まで上げたら、肩甲骨を寄せて広背筋を完全に収縮させる
■バーベルプルオーバーの動作注意点とポイント
バーベルプルオーバーを行う上で、リスク回避のために必ず留意していただきたいのが、万が一セット中に力尽きたとしても、肩関節の可動範囲内でバーベルが落下する環境で行うということです。
具体的には、高さ(直径)のある20kgプレートを使ったり、後方に台を設置したり、補助者をつけたりというのが対処方法です。
■バーベルプルオーバーの目的別の重量負荷設定
筋トレで鍛える骨格筋を構成している筋繊維には以下の三種類があり、それぞれの特徴は次の通りです。
①速筋繊維TYPE2b
約10秒前後の短い時間に爆発的・瞬発的な収縮をする特徴があり、トレーニングにより強く筋肥大します。10回前後の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
②速筋繊維TYPE2a
10~60秒ほどのやや長時間で瞬発的な収縮をする特徴があり、トレーニングによりやや筋肥大します。15回前後の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
③遅筋繊維TYPE1
60秒以上数分・数時間の持続的・持久的な収縮をする特徴があり、トレーニングにより筋肥大せずに筋密度が上がります。20回以上の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
つまり、筋肥大バルクアップ目的なら①、細マッチョ筋トレや女性の部分ボリュームアップ目的なら②、減量引き締めダイエット目的なら③、の負荷回数設定で筋トレを行っていきます。ただし、腹筋郡・前腕筋郡・下腿三頭筋など日常での使用頻度が高い部位は、基本的に20回以上高反復回数で鍛えます。
また、バーベルプルオーバーを胸郭拡張目的で行う場合は、20~30回行える軽めの重量で、筋肉に効かせるのではなく肋骨のストレッチを重視して行います。
■胸郭を広げるプルオーバートレーニング
●ブリージングスクワットと連続して行う
プルオーバーを胸郭拡大のためのトレーニングとして行う場合は、ブリージングスクワットと呼ばれるスクワットバリエーションと組み合わせて行います。
ブリージングスクワットとは、呼んで字のごとく「息をするスクワット」です。通常の筋力トレーニングとしてのスクワットでは、挙上時は息を詰めることがほとんどですが、ブリージングスクワットでは「立つときに息を吐き、立ってから息を吸いしゃがみ、また立つときに息を吐く」という呼吸方法で行います。
そして、あくまでも呼吸のためのスクワットですあり筋力を鍛えるためではありませんので、軽い重量で20~30回を息が上がるまで繰り返します。
その後、セット間のインターバルをおかずにバーベルプルオーバーを行い、胸郭の拡張を促します。
胸郭拡大トレーニングの成果は、10代後半から20代前半で顕著にあらわれ、うまくいくと10cm以上胸囲を増やすことも可能です。実際、筆者も大学生時代に胸郭拡大トレーニングを行い、半年ほどで胸囲が10cm前後増えた経験があります。
この胸郭拡大トレーニングは、30代以降も伸び率は落ちるものの有効です。大胸筋や広背筋を鍛えて筋肉を増やすことも大切ですが、その土台となる胸郭トレーニングにも是非チャレンジしてください。
さらに詳しくは、下記の記事で解説しています。
▼胸郭拡大トレーニング
胸囲100cm~110cm以上になる筋トレ】胸郭を広げるトレーニングのやり方
■バーベルプルオーバーにおすすめの筋トレグッズ
●リストラップとパワーベルトがおすすめ
バーベルプルオーバーはどうしても手首に強い負担がかかってしまいますので、リストラップはぜひとも使用したいアイテムです。そして、入手するのであれば、普及品とは違い屈強なサポート力のあるリストラップを強くおすすめします。
腰を保護するだけでなく、腹圧を高め最大筋力を向上させてくれるトレーニングギアがトレーニングベルトです。バーベル筋トレにおいては、ほぼ必須のギアとも言えますので、ぜひ入手することをおすすめします。なお、トレーニングベルトはトレーニーにとって「筋トレの友」とも言える存在になってきます。はじめから安易なものを選ばずに、考えているよりもワンランク・ツーランク上のものを入手することがベルト選びの秘訣です。
■おすすめの記事
■バーベルトレーニングの基礎知識
●バーベルトレーニングの長所と短所
バーベルトレーニングは全てのウエイトトレーニングの基本となる筋トレ方法で、全身を高負荷で鍛えられ、なおかつ動作軌道のブレやズレを自身で支える必要があるため、体幹インナーマッスルも強くなるというメリットがあります。
このため、中級者~上級者には必須のトレーニング方法と言えます。反面、マシントレーニングのように軌道が決まっていないため、フォームや動作を習得するのには正確な指導を受け、慣れと経験が必要になります。
バルクアップ筋肥大・減量ダイエットいずれの目的の場合でも、いずれは習得したいトレーニング方法と言えます。
なお、他のバーベルトレーニングメニューについては、下記の種目別解説記事をご参照ください。