広背筋などが鍛えられる斜め懸垂(インバーテッドロウ)の効果的な自宅でのやり方を解説するとともに、目的別に適切な負荷回数設定について説明します。また、斜め懸垂を家で行えるおすすめの簡易器具や机・タオルを流用した方法についてもご紹介します。
■斜め懸垂(インバーテッドロウ)が効果のある筋肉部位
●広背筋を中心に僧帽筋や上腕二頭筋に効果的
斜め懸垂(インバーテッドロウ)は広背筋を中心に僧帽筋や上腕二頭筋といった上半身の引く筋にグループに効果があります。各筋肉の特徴と作用は以下の通りです。
○広背筋:背中に逆三角形状に分布し、上半身最大の筋肉です。腕を上や前から引き寄せる作用があり、鍛えることで逆三角形の体型になります。
○僧帽筋:首の後ろに位置する筋肉で、肩甲骨を引き寄せる作用があります。鍛えることで厚みのある上半身になります。
○上腕二頭筋:上腕の前面に位置する力こぶの筋肉で、鍛えることで逞しい腕になります。
●広背筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止
読みかた:こうはいきん
英語名称:latissimus dorsi muscle
部位詳細:上部|下部
起始:下位第6胸椎~第5腰椎の棘突起・肩甲骨下角第9~12肋骨|正中仙骨稜・腸骨稜後方
停止:上腕骨小結節稜
●僧帽筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止
読みかた:そうぼうきん
英語名称:trapezius muscle
部位詳細:上部|中部|下部
起始:後頭骨上項線・外後頭隆起・頚椎棘突起|第7頚椎・第1~3胸椎棘突起|第4~12胸椎棘突起
停止:肩甲棘・肩峰
●上腕二頭筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止
読みかた:じょうわんにとうきん
英語名称:biceps
部位詳細:長頭|短頭
起始:肩甲骨関節上結節|肩甲骨烏口突起先端
停止:橈骨粗面
■斜め懸垂(インバーテッドロウ)の目的別負荷回数設定
●筋肥大なら10回・細マッチョなら15回・ダイエットなら20回
斜め懸垂(インバーテッドロウ)の負荷や回数は目的別に設定をしなくてはいけません。筋肉(筋繊維)には大きく3種類があり、それは瞬発筋タイプ2b(FG筋)・瞬発筋タイプ2a(FO筋)・持久筋(SO筋)でそれぞれの特徴と負荷回数設定は以下の通りです。
○瞬発筋タイプ2b(FG筋):30秒以内の強く短い筋収縮の主体となる筋繊維で、よく筋肥大します。10回前後の反復回数で限界がくる負荷回数で鍛えます。
○瞬発筋タイプ2a(FO筋):60秒前後の強くやや持久的な筋収縮の主体となる筋繊維で、やや筋肥大します。15回前後の反復回数で限界がくる負荷回数で鍛えます。
○持久筋(SO筋):長く持久的な筋収縮の主体となる筋繊維で、鍛えると筋密度が向上しますが筋肥大は起こりません。20回以上の反復回数で限界がくる負荷回数で鍛えます。
■自宅斜め懸垂(インバーテッドロウ)におすすめの器具
本格的に自宅筋トレを始めるならば、まず揃えたいのが懸垂ラック・装置です。懸垂だけでなく腕立て伏せ・ディップ・腹筋など、一通りの自重トレーニングができるチンニングラックから簡易的にドア部分に取り付けるものまで、さまざまなタイプがあります。
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■斜め懸垂(インバーテッドロウ)の種類とやり方
●ノーマル斜め懸垂(インバーテッドロウ)
基本となるノーマル斜め懸垂(インバーテッドロウ)の模範的な動画がこちらのものです。肩幅よりやや広く手幅をとり、背すじを真っ直ぐに伸ばし、胸を張り肩甲骨を寄せながら身体を引き上げます。広背筋を中心に効果的です。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①懸垂器具の下に入り、バーをつかんで背中を真っ直ぐにして構える
②肩甲骨を寄せながら、肘を曲げて身体を引き上げる
③バーに胸がつくまで身体を引き上げたら、肩甲骨を完全に寄せて背筋群をしっかりと収縮させます
④ある程度は筋肉でコントロールして身体を元の位置まで戻し、再び身体を引き上げていく
●足上げ斜め懸垂(インバーテッドロウ)
通常の斜め懸垂(インバーテッドロウ)で強度が足らない方は、こちらのような足上げ斜め懸垂(インバーテッドロウ)を行うとよいでしょう。動作のポイントはノーマル斜め懸垂(インバーテッドロウ)と同様です。広背筋を中心に効果的です。
●パラレル斜め懸垂(インバーテッドロウ)
僧帽筋に対して高い負荷を与えることのできるのが、この動画のようなパラレルグリップでの斜め懸垂(インバーテッドロウ)です。しっかりと肩甲骨を引き寄せることで僧帽筋が最大収縮します。
●逆手斜め懸垂(インバーテッドロウ)
上腕二頭筋に対する負荷が高くなるのがこちらのような逆手斜め懸垂(インバーテッドロウ)です。上腕二頭筋をターゲットにする場合は、できるだけ背中の筋肉を使わないように、やや背中を丸めたまま動作を行ってください。
●ワンハンド斜め懸垂(インバーテッドロウ)
上腕二頭筋を高い強度で鍛えることのできるバリエーションがワンハンド斜め懸垂(インバーテッドロウ)ですが、このレベルになると通常の懸垂ができると思いますので、懸垂で鍛えていくことをおすすめします。
■家の机を使った斜め懸垂(インバーテッドロウ)
●机を使った順手斜め懸垂(インバーテッドロウ)
自宅にある机を流用した順手斜め懸垂(インバーテッドロウ)がこちらの動画のものです。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①机の下に入り、縁をつかんで構える
②肩甲骨を寄せながら、肘を曲げて身体を引き上げる
③肘が直角になるまで身体を引き上げたら、肩甲骨をしっかりと寄せて背筋群を完全に収縮させる
④ある程度は筋肉でコントロールして身体を元の位置まで戻し、再び身体を引き上げていく
●机を使った逆手斜め懸垂(インバーテッドロウ)
自宅にある机を流用した逆手斜め懸垂(インバーテッドロウ)がこちらの動画のものです。
なお、上腕二頭筋をターゲットにして行う場合、肩甲骨を寄せて背筋群を使うと腕に対する負荷が少なくなりますので、あえて肩甲骨を寄せずに腕の力で動作を行います。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①机の下に入り、逆手で縁をつかんで構える
②肩甲骨を寄せずに、肘を曲げて身体を引き上げる
③肘が直角になるまで身体を引き上げたら、腕に力を入れて上腕二頭筋をしっかりと収縮させる
④ある程度は筋肉でコントロールして身体を元の位置まで戻し、再び身体を引き上げていく
■タオルを使った斜め懸垂(インバーテッドロウ)
●筋力に自信のない女性にもおすすめ
最後にご紹介するのがタオルを使った斜め懸垂(インバーテッドロウ)です。この方法だと角度が自在に調整できるので、筋力に自信のない女性でも簡単に背筋を鍛えることが可能です。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①ドアにシーツを挟み、身体が好みの角度に倒れる位置でシーツを掴んで構える
②肩甲骨を寄せながら、肘を曲げて身体を引き上げる
③肘が直角になるまで身体を引き上げたら、肩甲骨をしっかりと寄せて背筋群を完全に収縮させる
④ある程度は筋肉でコントロールして身体を元の位置まで戻し、再び身体を引き上げていく
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【自重トレーニングメニュー】限界突破の最強筋肥大筋トレを解説
■自重トレーニングの基礎知識
●自重トレーニングの長所と短所
自重トレーニングは器具が必要ないため、いつでもどこでも手軽に取り組めるのがメリットです。
一方、自重トレーニングには複数の筋肉・関節を同時に動かす複合関節運動(コンパウンド種目)しかなく、個別の筋肉を単関節運動(アイソレーション種目)で集中的に鍛えるのが難しいというデメリットがあります。
ですので、自重トレーニングの後に仕上げとしてチューブトレーニングやダンベルトレーニングを行うのが理想と言えます。
●自重トレーニングの負荷の上げ方
自重トレーニングの負荷の上げ方には、主に以下の方法があります。
①動作をゆっくり行う
②重りを身体につける
③一番負荷のかかる位置(スティッキングポイント)で動作を一度静止する
なお、他の自重トレーニングメニューについては、下記の種目別解説記事をご参照ください。