肘を屈曲する動作の主働筋である上腕筋の鍛え方・筋トレ方法を解説します。「腕を曲げる力」≒「腕力」について非常に多くの方が誤解しているのが、「腕を曲げる主働筋が上腕二頭筋である」ということです。しかし、実際は、腕を曲げる動作においては、上腕筋が筋力的にも主働筋であり、このあまり知られていない筋肉を鍛えることが腕力向上の近道なのです。
【アームレスリング主戦績】
全日本マスターズ80kg超級2位
アジア選手権マスターズ90kg級3位
■上腕筋の位置と働き
●肘関節基部に近く肘関節の屈曲に強い筋力を発揮する
上腕筋は上腕骨の基部付近と尺骨をつなぐように位置しており、肘関節を屈曲させる作用があります。前腕を回外(手の平を横から前に向ける回転方向)しながらの肘関節屈曲では上腕二頭と共働しますが、前腕骨を回内(手の平を横から後ろに向ける回転方向)しながらの肘関節屈曲では単一で作用します。
これをわかりやすく言いかえると、手の平を上に向けながら腕を曲げる時は上腕筋+上腕二頭筋が働き、手の平を下に向けながら腕を曲げる時は上腕筋のみが働くと言えます。
■上腕二頭筋より筋力が強い上腕筋
●紡錘状筋と羽状筋の収縮能力の違いに起因する
写真:https://www.alive-well-style.com/
筋肉(骨格筋)には、その筋繊維の集まり方から、紡錘状筋・羽状筋(半羽状筋)・収束状筋があり、単位体積あたりの筋収縮力は、収束状筋>羽状筋(半羽状筋)>紡錘状筋となっています。
肘関節の屈曲で共働する上腕筋と上腕二頭筋はそれぞれ「上腕筋=羽状筋」、「上腕二頭筋=紡錘状筋」であり、標準的な上腕筋と上腕二頭筋の体積を考慮すると、その筋力は「上腕筋」>>「上腕二頭筋」です。
●上腕筋の筋力が特に要求されるスポーツ
上腕筋の強さがそのまま競技の強さにもなってしまうスポーツの代表格は、筆者も選手経験のあるアームレスリングです。とくに、トップロール(吊り手)と呼ばれる回内運動をともなったテクニックでは、上腕筋の筋力が勝敗に強く関わります。
このほかにも、柔道の「引き手」=相手の袖を掴む手(多くは左手)は回内運動をともなって相手を引き寄せるため、上腕筋の筋力が技の成否に大きく関わります。
※なお、アームレスリングのフック(咬み手)や柔道の釣り手(襟を持つ手)では、回外運動をともなうため、上腕二頭筋の筋力も大きく関わります。
■上腕筋の鍛え方
●パラレルグリップ懸垂
自重トレーニングで上腕筋を鍛えるのに最適な種目がナロー&パラレルグリップでの懸垂です。
なお、動画でも使われているドア部分に引っ掛けて使う「簡易懸垂器具」があれば、自宅での懸垂トレーニングもリーズナブルに行えます。
●ダンベルハンマーカール
ダンベルで上腕筋を鍛えるのに効果的なトレーニング方法がダンベルハンマーカールです。動画を見れば、上腕二頭筋と共に上腕筋が主働筋として働いていることがよくわかります。
●ダンベルサイドカール
ダンベルサイドカールはダンベルハンマーカールのバリエーションの一つで、上腕二頭筋長頭のマイナーな作用である肩関節の水平内転・屈曲を利用した、非常に収縮率の高いトレーニング方法です。上腕筋にも効果的です。
●バーベルトレーニングでの筋トレ方法
バーベルで上腕筋を鍛えるのなら、リバースカールがおすすめです。なお、動画のようにEZバーを使えば、自分にあった角度に握り方を調整できるので手首に負担がかかりません。
●ケーブルロープカール
ケーブルアタッチメントをロープにして行うケーブルロープカールは、上腕二頭筋長頭と上腕筋に効果的なトレーニング方法です。
●引く筋トレにはパワーグリップを
上半身の引く筋トレで初心者の方に多く見られるのが「先に握力がなくなって追い込めない」というケースです。筋トレは101%で行ってはじめて成果がでます。パワーグリップを使用して引くトレーニングの効率を上げることをおすすめします。
●さらに強力サポートのエイトストラップ
パワーグリップよりもさらに強力なサポートが必要な場合は、エイトストラップが有効です。
■筋トレだけでなく食事も大切
●筋トレの三大要素は「筋トレ」「食事」「睡眠」
上腕二頭筋に限らず、筋トレの三大要素は「筋トレ」「食事」「睡眠」です。このどれが欠けても、効率的な筋肉の発達はありません。とくに食事には細心の心がけが必要で、ある意味、筋トレ自体以上に大切な要素と言えるでしょう。
筋肉を発達させていく場合、体重1kgにつき2gの純タンパク質が必要となります。かなりの量ですが、そのためには、食事に関する栄養学的な知識を身につけることが必須です。
●上腕二頭筋を発達させる食事メニュー
なにも上腕二頭筋の筋トレだけではありませんが、トレーニングをしたら筋肉の超回復と筋肥大に必要となるタンパク質を適切に摂取しましょう。タンパク質摂取が不十分だと、せっかくのトレーニングが結果になりませんので注意が必要です。
筋肥大に必要なタンパク質量の目安は、男性の場合で体重1kgあたり約2g前後(純タンパク質)です。なお、おおよその計算方法ですが、タンパク質食品の重さは純タンパク質1gの5倍の重量になります(例:肉類100gに純タンパク質は20g含まれる)。
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