上腕三頭筋の鍛え方・筋トレ方法について、自宅での自重・ダンベルトレーニングからジムでのバーベル・マシントレーニングまで幅広く紹介します。上腕三頭筋は腕のなかで最大の筋肉で、腕を丸太のように太く逞しくするためにはこの筋肉を鍛えるのが最短距離です。
※ジムで実際に筆者が実践・指導している経験をもとに執筆しています。
■当サイト筋トレ情報のエビデンス(根拠)
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▼身体活動・運動の重要性について
■上腕三頭筋の部位と働き
●長頭・内側頭・外側頭から構成され肘を伸展させる働きをする
上腕三頭筋は、上腕内側上部に位置する長頭、上腕外側に位置する外側頭、肘周辺の上腕内側に位置する内側頭の3部位から構成されています。長頭は上腕三頭筋全体のボリュームに大きく影響し、外側頭および内側頭は上腕三頭筋の盛り上がったフォルムに強く影響します。
このため、上腕三頭筋は「長頭を鍛えて太くする」ことと「外側頭・内側頭を鍛えて形をよくする」という2つの考え方でメニューを組む必要があります。なお、上腕三頭筋外側頭・内側頭をひとまとめにして上腕三頭筋短頭と呼ぶ場合もあります。
●上腕三頭筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止
読みかた:じょうわんさんとうきん
英語名称:triceps
部位詳細:長頭|外側頭|内側頭
起始:肩甲骨関節下結節|上腕骨後面|上腕骨後面
停止:尺骨肘頭
●上腕三頭筋長頭の作用と鍛え方のコツ
上腕三頭筋のなかでも長頭は、上腕の筋肉のなかで唯一体幹(肩甲骨)と接合しており、肘関節の伸展の作用のほかに、腕全体の内転(腕を閉じる動き)や回内(手の平を後ろに向ける動き)などにも関わっています。このため、上腕三頭筋長頭を鍛えることは、腕を太くするだけでなく、スポーツ競技の能力向上においても非常に重要です。
なお、トレーニングにおいては、肘関節の伸展動作の筋トレではできる限り体幹に腕を近づけて行い、伸展動作に回内方向の回旋動作を加えることで上腕三頭筋長頭を強く刺激することが可能です。
また、肘関節が肩関節より上にある状態での肘関節伸展動作は、肩甲骨と接合している上腕三頭筋長頭の特性上、筋肉が最大伸展した状態からの動作になるので、非常に高い効果が得られます。
●上腕三頭筋短頭(内側頭・外側頭)の作用と鍛え方のコツ
一方、上腕三頭筋短頭は肘関節伸展の単一作用のみを持っています。特に、肘を開いた状態で伸展させるときに強く働きます。ですので、トレーニングにおいては、やや肘を開き気味に動作を行うことで上腕三頭筋短頭を効率よく鍛えることが可能です。
また、肘関節を伸展する単一動作よりも、腕を押し出すといった大胸筋・三角筋と共働する複合関節運動=コンパウンド種目で、より負荷がかかる傾向にあります。
●上腕三頭筋の共働筋
肘関節の伸展時には、肘関節基部に位置する肘筋(Anconeus muscle)と呼ばれるインナーマッスルと共働し、前腕の回内時には前腕筋群の円回内筋(pronator teres muscle)や方形回内筋(pronator quadratus muscle)と共働して働きます。
なお、全身の筋肉名称と作用についてさらに詳しく調べたい方は、下記のリンク先をご参照ください。
▼参考記事
筋肉の名前図鑑|全身の骨格筋の名前と作用およびその鍛え方・筋トレ方法を完全解説
■筋繊維の種類と筋トレの反復回数
筋力トレーニングの対象となる骨格筋は筋繊維が束となって構成されていますが、その筋繊維には主に速筋と遅筋の二種類があり、さらに速筋は2つのタイプに分けられます。そして、それぞれに特性が異なり、トレーニングでの適正反復回数も異なります。
①遅筋(筋繊維タイプⅠ)
1分以上の持久的な運動において、持続的に収縮する筋繊維です。トレーニングをしても筋肥大は起こらず、筋スタミナが向上します。筋トレにおいては20回の反復で限界がくるような軽負荷でトレーニングを行います。
②速筋(筋繊維タイプⅡa)
30~60秒程度のやや持久要素もある瞬発運動において、持続的かつ瞬発的に収縮する筋繊維です。トレーニングによってやや筋肥大するとともに筋スタミナも向上します。筋トレにおいては12~15回程度の反復で限界がくるような中負荷でトレーニングを行います。
③速筋(筋繊維タイプⅡb)
30秒未満の瞬発運動において、爆発的に収縮する筋繊維です。トレーニングによって強く筋肥大します。筋トレにおいては6~12回程度の反復で限界がくるような高負荷でトレーニングを行います。
骨格筋を構成している筋繊維には大きく分けて速筋と遅筋の2種類があります。速筋は白っぽいため白筋とも呼ばれます。収縮スピードが速く、瞬間的に大きな力を出すことができますが、長時間収縮を維持することができず張力が低下してしまいます。遅筋は赤みがかった色から赤筋とも呼ばれます。収縮のスピードは比較的遅く、大きな力を出すことはできませんが、疲れにくく長時間にわたって一定の張力を維持することができます。
▼厚生労働省公式ページ
■上腕三頭筋の複合関節トレーニング
●自宅での自重を使った上腕三頭筋複合関節筋トレ
・ディップス
自重トレーニングのなかでも上腕三頭筋に強度の負荷を与えられるのがディップスです。肘を閉め、やや前に身体を下ろすのがポイントです。上腕三頭筋の長頭に特に効果があります。
なお、本種目はかなりの高負荷トレーニングですので、手首関節を保護するためにもサムレスグリップ(親指を他の四本の指と同じ側にする)でグリッピングし、手の平付け根側=前腕骨直下で体重を支えるようにしてください。
なお、自宅で簡単にディップスを行う方法として、この動画のような椅子を二つ使って行うやり方がおすすめです。
・リバース腕立て伏せ(ベンチディップ)
リバース腕立て伏せ・トライセップスディップス・ベンチプッシュアップ・ベンチディップなど様々な名称がある上腕三頭筋の自重トレニングがこちらの動画のものです。肘を閉じると長頭に、開くと短頭に効果があるのはディップスの場合と同様です。
また、自宅で簡単にできる高強度の上腕三頭筋トレーニングとしておすすめなのが。この動画のような椅子を二つ使ったリバース腕立て伏せです。
・ダイヤモンド腕立て伏せ
また、手幅を閉じ、親指と人差し指でダイヤモンド型を作って行うダイヤモンド腕立て伏せも、上腕三頭筋に効率的な自重トレーニングです。このような手の置き方をすることにより、手首への負担が軽減されるとともに、上腕三頭筋の内側頭・外側頭を効率的に鍛えることが可能です。
・ボール腕立て伏せ
メディシンボールやミニバランスボールに手をついて行うボール腕立て伏せは、ダイヤモンド腕立て伏せの強化版と言える種目です。ボールに手を置くことで可動範囲も広がり、さらに強度と効果が高まります。
・ナロー腕立て伏せ
一方、上腕三頭筋長頭を効率的に鍛えることのできる自重トレーニングがナロー腕立て伏せ(クローズグリッププッシュアップ)です。肘を体幹に沿わせるように動作することで上腕三頭筋長頭に負荷が集中します。
・パイクプッシュアップ
上腕三頭筋と三角筋を同時に鍛えることのできる自重トレーニング種目が、腰を高く構えて腕立て伏せをするパイクプッシュアップです。上腕三頭筋のなかでも短頭(内側頭・外側頭)に効果的です。
・ヒンズープッシュアップ
パイクプッシュアップの動作に身体を沈めてすくい上げるような動作を加えたのがヒンズープッシュアップです。身体をすくい上げる動作の時に上腕三頭筋に強い負荷がかかります。
●自宅でのダンベルを使った上腕三頭筋複合関節筋トレ
・トライセップスダンベルプレス
ダンベル筋トレでおすすめなのが、通常のダンベルプレスと逆にダンベルを握るトライセップスダンベルプレスです。肘をしめ、ブリッジはせずに行うのがポイントです。肘を開きぎみで行えば上腕三頭筋の内側頭・外側頭を、閉じ気味で行えば上腕三頭筋長頭を鍛えるのに適した種目です。
・ハンマーグリップダンベルプレス
通常のダンベルプレスと違い、縦にダンベルを保持するハンマーグリップダンベルプレスも上腕三頭筋に効果的なダンベル筋トレです。特に上腕三頭筋長頭に対して効果の高いトレーニング方法になります。
●ジムでのバーベルを使った上腕三頭筋複合関節筋トレ
・ナローグリップベンチプレス
バーベルトレーニングで上腕三頭筋を効果的に鍛えれるのがナローグリップベンチプレスです。こちらも、肘をしめ、ブリッジはせずに行うのがポイントです。肘をやや開くと上腕三頭筋の内側頭・外側頭に、強くしめると長頭に効果があります。
・リバースグリップベンチプレス
リバースグリップベンチプレスも上腕三頭筋に対して効果的なバーベルトレーニングです。手幅を通常のベンチプレスよりも広くとって行うのがポイントです。
●ジムでのマシンを使った上腕三頭筋複合関節筋トレ
・ディップスマシン
マシンならディップスマシンがおすすめです。体重を乗せればかなり重い重量が扱えますが、体重を使わずに押しきれる重量でしっかり効かせるのが大切です。
・スミスマシンナローベンチプレス
バーベルトレーニングに近い感覚で行える上腕三頭筋のマシントレーニングがスミスマシンナローベンチプレスです。バーベルのブレをマシンのレールが支えてくれるので、より高負荷で上腕三頭筋を追い込むことができます。
■上腕三頭筋の単関節トレーニング
自重トレーニングでは上腕三頭筋のみを鍛える単関節トレーニングはありませんので、ディップスやダイヤモンド腕立て伏せで意識を上腕三頭筋に集中し追い込み・仕上げを行ってください。
●自宅でのトレーニングチューブを使った上腕三頭筋単関節筋トレ
・チューブフレンチプレス
トレーニングチューブは伸びれば伸びるだけ負荷が増加する漸増負荷特性があり、ターゲットにした筋肉を完全収縮させて仕上げるのに最適で、自重やダンベル筋トレの後に行うと効果的です。
チューブを使った上腕三頭筋のトレーニングとして基本となるのが、こちらのようなチューブフレンチプレスです。しっかりと肘を固定し、肘関節の屈曲だけで動作を行うようにしてください。
なお、肘をやや開くと上腕三頭筋短頭に、閉じると長頭に効果的です。
・チューブキックバック
上腕三頭筋長頭に効果の高いのが、こちらのチューブキックバックです。肘を伸ばしきったポジションで、手の平をやや上に向けるように回内させると、上腕三頭筋長頭が完全収縮し、効果が倍増します。
・チューブトライセプスプレスダウン
チューブトライセプスプレスダウンは、上方に取りつけたトレーニングチューブを肘関節の伸展のみで引き下げるトレーニング方法で、上腕三頭筋の短頭に特に効果的です。
●自宅でのダンベルを使った上腕三頭筋単関節筋トレ
・ダンベルフレンチプレス
ダンベルの単関節トレーニングでおすすめの上腕三頭筋筋トレがダンベルフレンチプレスです。確実に追い込むためには片手ずつ肘を保持して行うワンハンドフレンチプレスがよいでしょう。オーバーヘッド系種目では、肩甲骨と接合している上腕三頭筋長頭が最大伸展した状態からの動作になるため、非常に強い負荷を与えることが可能です。
・ダンベルトライセプスエクステンション
上腕三頭筋の短頭に効果の高いダンベル筋トレがダンベルトライセプスエクステンションです。通常はベンチの上で行いますが、床の上で行っても効果は同様です。
・ダンベルキックバック
ダンベルキックバックは上腕三頭筋長頭に効果的な単関節種目で、腕を伸ばしたポジションでやや前腕を回内(手の平を上に向ける方向)に旋回させると上腕三頭筋長頭が完全収縮して効果が倍増します。
・ダンベルテイトプレス
ダンベルテイトプレスはややマイナーなダンベルトレーニングですが、通常の上腕三頭筋トレーニングとは肘関節の屈曲角度が異なるため、発達停滞期などに導入するとよい刺激になります。
●ジムでのバーベルを使った上腕三頭筋単関節筋トレ
・バーベルフレンチプレス
上腕三頭筋の仕上げに最適なバーベル単関節トレーニングがバーベルフレンチプレスです。肘をやや開くと上腕三頭筋内側頭・外側頭に、閉めると上腕三頭筋長頭に効果的です。
●ジムでのマシンを使った上腕三頭筋単関節筋トレ
・トライセップスプレスダウン
上腕三頭筋の追い込みに最適なマシン単関節トレーニングがトライセップスプレスダウンです。ノーマルグリップだと上腕三頭筋内側頭・外側頭に、縦持ちやロープで行うと上腕三頭筋長頭に負荷がかかります。
・ケーブルキックバック
ケーブルキックバックは、上腕三頭筋のなかでも長頭に集中的な効果があります。
ケーブルキックバックは、肩関節を動かすと背筋群に負荷が逃げてしまいますので、肘を固定して肘から先だけで動作をすることが重要です。
また、肘を伸ばした位置で前腕を回内回旋(手の平が上を向く方向)させると、上腕三頭筋長頭が完全に収縮して非常に効果的です。
・ケーブルオーバーヘッドフレンチプレス
ケーブルフレンチプレスは、上腕三頭筋に効果があり、フォームにより(肘の開き具合)、上腕三頭筋長頭から短頭(外側頭・内側頭)まで効果のある部位が変化しますが、肩甲骨に接合しており、肘を肩より上にあげた状態で最大伸展する長頭の性質を考え、オーバーヘッドでのケーブルフレンチプレスは長頭をターゲットにするのが定石です。
動作においては、肩関節が動いてしまうとプルオーバー系の動きになってしまい、負荷が大胸筋や背筋群に逃げてしまうので、肘を頭の横にしっかりと固定し、肘から先だけで行うことが重要です。
なお、長頭をターゲットにする場合、脇の角度はしめたほうが効果的ですので、ロープアタッチメントで行うことをおすすめします。
・マシントライセプスエクステンション
マシントライセプスエクステンションは手軽に上腕三頭筋短頭を鍛えられるマシン種目です。肘を肩幅より広くししたり、逆にせまくしたりすると、肘関節に対して負担がかかってしまいますので、肘は肩幅と同じ程度にし、両腕が平行になるように動作を行ってください。
■筋トレだけでなく食事も大切
●筋トレの三大要素は「筋トレ」「食事」「睡眠」
上腕三頭筋に限らず、筋トレの三大要素は「筋トレ」「食事」「睡眠」です。このどれが欠けても、効率的な筋肉の発達はありません。とくに食事には細心の心がけが必要で、ある意味、筋トレ自体以上に大切な要素と言えるでしょう。
筋肉を発達させていく場合、体重1kgにつき2gの純タンパク質が必要となります。かなりの量ですが、そのためには、食事に関する栄養学的な知識を身につけることが必須です。
●上腕三頭筋を発達させる食事メニュー
なにも上腕三頭筋の筋トレだけではありませんが、トレーニングをしたら筋肉の超回復と筋肥大に必要となるタンパク質を適切に摂取しましょう。タンパク質摂取が不十分だと、せっかくのトレーニングが結果になりませんので注意が必要です。
筋肥大に必要なタンパク質量の目安は、男性の場合で体重1kgあたり約2g前後(純タンパク質)です。なお、おおよその計算方法ですが、タンパク質食品の重さは純タンパク質1gの5倍の重量になります(例:肉類100gに純タンパク質は20g含まれる)。
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