ナロープッシュアップは上腕三頭筋を中心に大胸筋や三角筋など上半身の押す筋肉群に効果的な腕立て伏せのやり方です。この腕立て伏せには種類がいくつかあり、それぞれで上腕三頭筋の長頭・内外側頭への効き方が変化します。
■ナロープッシュアップが効果のある筋肉部位
●上腕三頭筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止
読みかた:じょうわんさんとうきん
英語名称:triceps
部位詳細:長頭|外側頭|内側頭
起始:肩甲骨関節下結節|上腕骨後面|上腕骨後面
停止:尺骨肘頭
ナロープッシュアップは主に上腕三頭筋のトレーニングとして行われますが、このほかに大胸筋や三角筋にも効果があります。
■ナロープッシュアップの種類
ナロープッシュには主に以下の種類があります。
・ナロープッシュアップ
・ダイヤモンドプッシュアップ
・ヒンズープッシュアップ
■ナロープッシュアップの目的別回数設定
ナロープッシュアップを行う目的には①上腕三頭筋の筋肥大・バルクアップと②二の腕の引き締め・ダイエットの二つがありますが、動作ややり方は共通ですが目的別に回数設定を変える必要があります。
①の筋肥大・バルクアップ目的の場合には10回前後の反復回数で限界が来る負荷設定が最適です。10回以上の反復が可能な方は「ゆっくり動作する」「背中に重りを背負う」などの方法で負荷を強めてください。
反復回数を増やしていっても筋肥大・バルクアップ効果はあまり期待できません。
一方、②の引き締め・ダイエット目的の場合には20回以上の反復回数で限界が来るようにするのが最適です。
20回以上腕立て伏せができない方は、下記ような「膝つき腕立て伏せ」のナローバージョンで行ってください。
■ナロープッシュアップの呼吸方法
ナロープッシュアップに限ったことではなく、筋トレ全般に言えることですが、筋肉は息を吐くときに緊張し息を吸うときに弛緩します。
ですので、効率的にナロープッシュアップをするためには、「身体を押し上げながら息を吐き、身体を下ろしながら息を吸う」という呼吸が必要になります。
■ナロープッシュアップのやり方
こちらが一般的なナロープッシュアップの動画です。ちなみに、海外ではクローズグリッププッシュアップと呼ぶのが主流になります。
コツは肘をなるべく閉じ(体幹に引き寄せる)動作を行うことです。これにより、上腕三頭筋のなかでも特に長頭に効果があります。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①肩幅程度の手幅で床に手をつき、肩甲骨をしっかりと寄せ、背中を真っ直ぐにして構える
②肩甲骨を寄せたまま、背すじも真っ直ぐに保って、脇をしめて身体を下ろす
③身体を下ろしたら、反動を使わずに脇をしめ、肘を伸ばして身体を押し上げる
④身体を押し上げたら、肘を伸ばしきり上腕三頭筋を完全に収縮させる
※動作中は、お腹を突き出したり、腰を曲げたりしないように注意してください。
■ダイヤモンドプッシュアップのやり方
通常のナロープッシュアップは肩幅くらいに手幅を置きますが、さらに手幅を狭めると上腕三頭筋に対する負荷がさらに高まります。
ただし、そのまま手幅を狭めるだけだと角度的に手首関節に強い負担がかかり故障をするリスクがあります。
そのリスクを防ぐためには親指と人差し指で菱形(ダイヤモンド)を作るのが効果的で、その状態から腕立て伏せを行えばダイヤモンドプッシュアップになります。
肘を閉じ気味に行えば上腕三頭筋長頭に、肘を開き気味に行えば上腕三頭筋の外側頭・内側頭=短頭に対する効果が高まります。
■ヒンズープッシュアップのやり方
ヒンズープッシュアップは、身体を沈めてから曲線を描き身体を押し上げる動作のなかで強い負荷が上腕三頭筋および大胸筋下部に加わります。
また、その複雑な動きのなかで脊柱起立背筋群や腹筋群、下半身の各筋肉も鍛えられます。どちらかと言えば、引き締め・ダイエットむきの種目と言えるでしょう。
■ナロープッシュアップの目的別の重量負荷設定
筋トレで鍛える骨格筋を構成している筋繊維には以下の三種類があり、それぞれの特徴は次の通りです。
①速筋繊維TYPE2b
約10秒前後の短い時間に爆発的・瞬発的な収縮をする特徴があり、トレーニングにより強く筋肥大します。10回前後の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
②速筋繊維TYPE2a
10~60秒ほどのやや長時間で瞬発的な収縮をする特徴があり、トレーニングによりやや筋肥大します。15回前後の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
③遅筋繊維TYPE1
60秒以上数分・数時間の持続的・持久的な収縮をする特徴があり、トレーニングにより筋肥大せずに筋密度が上がります。20回以上の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
つまり、筋肥大バルクアップ目的なら①、細マッチョ筋トレや女性の部分ボリュームアップ目的なら②、減量引き締めダイエット目的なら③、の負荷回数設定で筋トレを行っていきます。ただし、腹筋郡・前腕筋郡・下腿三頭筋など日常での使用頻度が高い部位は、基本的に20回以上高反復回数で鍛えます。
■自重トレーニングにおすすめの器具類
●プッシュアップバーと懸垂器具
腕立て伏せ系のトレーニングをするのに、ぜひとも用意したいのがプッシュアップバーです。手首を真っ直ぐに保てるので関節を保護できるだけでなく、動作の可動域自体が広がるため、トレーニングの効果が倍増します。
▼おすすめのプッシュアップバー
【プッシュアップバー】種類・メーカー別の効果と使い方|おすすめもご紹介
本格的に自宅筋トレを始めるならば、まず揃えたいのが懸垂ラック・装置です。懸垂だけでなく腕立て伏せ・ディップ・腹筋など、一通りの自重トレーニングができるチンニングラックから簡易的にドア部分に取り付けるものまで、さまざまなタイプがあります。
▼おすすめの自宅懸垂器具
【おすすめ自宅背筋トレーニング器具】各メーカーの懸垂ラックや懸垂装置紹介
■自重トレーニングにおすすめの筋トレグッズ
●手首保護にリストラップを
押す筋トレではどうしても手首に強い負担がかかってしまいますので、リストラップはぜひとも使用したいアイテムです。そして、入手するのであれば、普及品とは違い屈強なサポート力のあるリストラップを強くおすすめします。
▼リストラップとは?
【おすすめのリストラップ】初心者むけに使いやすい長さやリストストラップとの違いも解説
●握力補助にパワーグリップを
上半身の引く筋トレで初心者の方に多く見られるのが「先に握力がなくなって追い込めない」というケースです。筋トレは101%で行ってはじめて成果がでます。パワーグリップを使用して引くトレーニングの効率を上げることをおすすめします。
▼パワーグリップとは?解説記事
【おすすめのパワーグリップ】使い方の解説と男性・女性どちらにも快適なアイテム紹介
■おすすめの記事
■自重トレーニングの基礎知識
●自重トレーニングの長所と短所
自重トレーニングは器具が必要ないため、いつでもどこでも手軽に取り組めるのがメリットです。
一方、自重トレーニングには複数の筋肉・関節を同時に動かす複合関節運動(コンパウンド種目)しかなく、個別の筋肉を単関節運動(アイソレーション種目)で集中的に鍛えるのが難しいというデメリットがあります。
ですので、自重トレーニングの後に仕上げとしてチューブトレーニングやダンベルトレーニングを行うのが理想と言えます。
●自重トレーニングの負荷の上げ方
自重トレーニングの負荷の上げ方には、主に以下の方法があります。
①動作をゆっくり行う
②重りを身体につける
③一番負荷のかかる位置(スティッキングポイント)で動作を一度静止する
なお、他の自重トレーニングメニューについては、下記の種目別解説記事をご参照ください。