体幹トレーニングの代名詞的な種目で、体幹全体に高い効果のあるフロントプランクの正しいやり方とバリエーションについて解説するとともに、初心者の方が最初に取り組むべき毎日のメニュー王ログラムも例示します。
■体幹トレーニングの特徴
●深層筋を刺激するトレーニング方法
一般的な筋トレで鍛える体幹部の表層筋(大胸筋・広背筋・僧帽筋など)は、積極的にものを押したり引いたりする動きに使われます。一方、深層筋である体幹筋群は、ものを押したり引いたりする時の姿勢の制御や体勢の保持に働きます。
このため、体幹を鍛えるためには速く強い動きは必要なく、ゆっくりとした姿勢を保持する動作のトレーニングが効果的です。
体幹トレーニングを鍛えると、スポーツとダイエットに高い効果があることが知られています。
●ダイエットに効果がある理由
体幹トレーニングはダイエットにも高い効果があることで知られていますが、それはなぜでしょう。
体幹トレーニングをすると、体幹筋群の筋密度・筋量があがります。もちろん、通常の筋トレで鍛える表層筋のように筋肥大はしないので、見た目はかわりません。人間の消費カロリーのなかで最も比率が高いのが基礎代謝ですが、その基礎代謝のなかでも最もエネルギー消費をするのが筋肉です。
このため、体幹トレーニングによって体幹の筋密度・筋量が向上すると、基礎代謝の高い、太りにくく痩せやすい体質になります。
また、腹部や腰椎周辺の体幹筋群を鍛えると、その周辺が引き締まり、外見上も非常に高いダイエット効果があります。
■フロントプレンクが効果のある筋肉部位
●まずは腹筋群に効果がある
フロントプランクがまず大きく効果のある筋肉部位が、体幹前面のインナーマッスルでもある腹筋群です。
腹筋群は、深層から順に腹横筋・内腹斜筋・外腹斜筋・腹直筋の四層構造をしており、体幹を屈曲および回旋させる作用があります。その部位別の作用は以下の通りです。
・腹横筋:腹圧を維持する
・内腹斜筋:外腹斜筋を補助する
・外腹斜筋:体幹を回旋させる
・腹直筋:体幹を屈曲させる
フロントプランクでは、なかでも最表層の腹直筋と最深層の腹横筋に対して高い効果があります。
●拮抗筋の脊柱起立筋にも効果的
長背筋群は、脊柱沿いの筋肉の総称で、脊柱起立筋・多裂筋・回旋筋などで構成されています。腹筋群と拮抗的に働き、体幹を伸展・回旋させるとともに、姿勢を維持する作用があります。
フロントプランクでは、長背筋のなかでも特に姿勢維持に大きな関わりのある脊柱起立筋に高い効果が得られます。
●共働筋の腸腰筋群にも効果的
フロントプランクは、腹筋群と助け合って作用する共働筋であり、股関節(骨盤と大腿骨を接合する)のインナーマッスルの腸腰筋群にも高い効果があります。
●二次的に二の腕裏側の上腕三頭筋にも効く
フロントプランクは、二次的に「肘関節を伸ばす」「腕を閉じる」作用のある、二の腕裏側に位置する上腕三頭筋にも効果があり、女性にとっては体幹を鍛えながら二の腕痩せも同時に行えるという、嬉しいメリットがあります。
■フロントプランクのやり方とポイント
●ノーマルフロントプランクの4つのポイント
こちらが、もっともスタンダードなフロントプランクのやり方で、肘をついて背すじを伸ばした状態で静止します。
動作で大切なポイントは四つあり、それは次の通りです。
①腰を曲げない
腰を曲げて突き出したスタイルでフロントプランクを行うと、負荷の大半は肝心の体幹部分に加わらず、腕や脚に負荷が逃げてしまいます。あくまでも体幹トレーニングですので、しっかりと背すじを真っ直ぐに伸ばし、腹筋群や脊柱起立筋に効かせるようにしてください。
②お腹を突き出さない
逆に、お腹を突き出したスタイルでのフロントプランクも、負荷の多くが腕や脚に逃げてしまう上、腰が反った状態になるため腰椎に対して負担となり、腰痛の原因となってしまうことも少なくありません。お腹を突き出さないと姿勢を維持できなくなった場合は、セットを中止し、少し休憩してから再びセットを行なうことをおすすめします。
③肩の真下に肘を置く
フロントプランクは腕を鍛えるトレーニングではありませんので、できるだけ腕の筋力に頼らないように、肩の真下に肘を置き、上半身の体重は筋力ではなく上腕骨で垂直に支えるようにしてください。
④前を見て姿勢を維持する
フロントプランクのセット終盤になってくると、どうしても苦しくなって下を向いて顎を引きがちですが、フロントプランクで姿勢を支える背筋群=脊柱起立筋と顎の連動性は「顎を上げると背筋が収縮する」です。
下を向いて顎を引いてしまうと、脊柱起立筋は弛緩しがちで余計に姿勢を維持しにくくなりますので、前を見ることで顎を上げて姿勢を維持することが大切なポイントです。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①うつ伏せになって、前腕を床について、背すじを真っ直ぐにして構える
②そのままの体勢で目標の時間まで静止する
③途中でお腹を突き出したり、逆に腰を曲げたりしないように気をつける
■取り組みやすい膝つきフロントプランク
筋力的に通常のフロントプランクを行うのが難しい、という方はこの動画のように膝をついて行う「膝つきフロントプランク」を行うことをおすすめします。
強度が低く、ほとんどの方ができますので、まずは30秒静止、最終的に1分静止ができるようになったら、通常のフロントプランクに取り組むとよいでしょう。
■強度を上げた足上げフロントプランク
逆に、通常のフロントプランクが1分以上しっかりと静止してできるという方は、このような足上げフロントプランク挑戦してみてください。
フロントプランクの姿勢を維持したまま、ゆっくりと片足ずつ後方に上げる動作を加えていきます。
■さらに高負荷のフロントプランク・アームレッグリフト
足上げプランクよりも、さらに負荷が高く効果的なやり方・バリエーションが対角線の手足を上げる動作を加えたフロントプランク・アームレッグリフトです。
■フロントプランクのプログラム
フロントプランクにこれから取り組む方におすすめのプログラムは、毎日コツコツと嫌にならないように3セットだけ行うというものです。
今回ご紹介したフロントプランクの強度別バリエーションのなかから、「30秒静止が可能な種類」をチョイスし、30秒静止×3セットを毎日行なっていってください。
そして、所定のセットで全て30秒静止ができるようになったら、1セットあたりの静止時間を1分に伸ばし、それが全セットできるようになったら、より負荷の高いバリエーションに進むようにしてください。
具体的には、通常フロントプランクができない女性の場合の例では以下のようになります。
①まず、膝つきフロントプランクを30秒静止×3セットできるように毎日継続する。
②次に膝つきフロントプランクの静止時間を1分にし、3セット完遂できるように継続する。
③膝つきフロントプランクがクリアできたら、通常のフロントプランク30秒×3セットを目指し、最終的に1分×3セットを目指す。
④その後、足上げフロントプランク→アームレッグリフトに進んでいく。
■自重トレーニングの基礎知識
●自重トレーニングの長所と短所
自重トレーニングは器具が必要ないため、いつでもどこでも手軽に取り組めるのがメリットです。
一方、自重トレーニングには複数の筋肉・関節を同時に動かす複合関節運動(コンパウンド種目)しかなく、個別の筋肉を単関節運動(アイソレーション種目)で集中的に鍛えるのが難しいというデメリットがあります。
ですので、自重トレーニングの後に仕上げとしてチューブトレーニングやダンベルトレーニングを行うのが理想と言えます。
●自重トレーニングの負荷の上げ方
自重トレーニングの負荷の上げ方には、主に以下の方法があります。
①動作をゆっくり行う
②重りを身体につける
③一番負荷のかかる位置(スティッキングポイント)で動作を一度静止する
なお、他の自重トレーニングメニューについては、下記の種目別解説記事をご参照ください。